あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
佐川さんは笑って、畳まれている私の服を指さす。

そして佐川さんは部屋を出て行ってくれた。

ドアが閉まると同時に、私はベッドから降り、服を着る。

そしてベッドを整えると、その上に借りたTシャツをきちんと畳んで置いてから、寝室のドアを開けた。

そして静かに玄関を目指す。

その途中で、佐川さんに捕まった。

「おい、何も言わずに出て行く気か?」

違うドアから顔を出した佐川さんに私は腕を掴まれた。

「そこに居たんですね。」

私はそのまま帰るつもりはなかったが、とにかく焦っていた。

「これを渡しておくから、今日は会社が終わったら着替えを持ってここへ来い。」

私に渡されたのは、多分ここの玄関の鍵。

「夕飯が用意してあれば、ベストだな。」

佐川さんはにんまりと笑う。

「鍵はそれしかないから、なくすなよ。だから萌香が来なかったら、俺は自分の家にも入れないんだからな。」

< 62 / 400 >

この作品をシェア

pagetop