あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私は佐川さんを見た。

「そんな大事な物、預かれませんよ。」

私は鍵を佐川さんに返そうとする。

「大丈夫。今度の休みには実家に行って、スペアの鍵をもらってくるから。それまでは不自由を掛けるけど悪いな。」

悪いなって…。

私は自分の手にある鍵を見つめる。

「おい、早くしないと会社に遅れるぞ。」

佐川さんは時計を見て、私を急かした。

お蔭で、私は鍵を返す事が出来なかった。

玄関先で靴を履いて振り向きざまに顔を上げると、そこには佐川さんの顔。

「うっ…。」

そのまま佐川さんは私の顎を持ち、唇を重ねてくる。

「じゃあ、頼むぞ。」

そう言って笑う佐川さんに見送られ、私はマンションから出る。
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