あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「いえ、ちょっと思い出した事があって…。」
私はむせながら答えた。
「タイミング悪い時に帰ってきちゃったみたいだな。」
社長は笑いながら、自分のデスクへ行く。
「お帰りなさい。お昼は済みましたか?」
私は社長に声をかけた。
「ああ、佐川と外で済ませて来た。資料を取りに寄っただけだ。今からすぐに出て、伊藤と現場で打ち合わせだ。」
お茶でも淹れようかなと思っていた私だが、それを聞いて立ち上がるのを辞めた。
「そう言えば…、相原さん。」
出掛ける用意が出来たようで、社長がまた私の席に近づいてきた。
「退職する時は、早目に言ってね。」
そんな意味ありげな事を社長は私に言った。
「えっ?」
私はとっさにその意味が理解出来ない。