あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

「まあ、それは社長と俺との話だからね。これ以上は萌香には話せない。」

一瞬真面目な顔をして、私に顔を寄せる佐川さん。

「ちっ、近いです、佐川さん。」

私は反射的に顔を後ろに引こうとした。

そんな私の後頭部に佐川さんの手が回る。

優しく私の唇に佐川さんの唇が触れる。

「佐川さん!ここは会社です。」

私は佐川さんの胸を押した。

「今晩はちゃんと話そうな。途中で寝るなよ、萌香。」

佐川さんは私の頬を手で撫でると、ニッコリ笑って去っていった。

「…もう…。」

私は去っていく佐川さんの気配を寂しく感じた。

ダメだ、すっかり佐川さんのペースにはめられている。

私は佐川さんに撫でられた頬に自分の手を持っていく。

困ったな…、嫌じゃないんだよね…。
< 78 / 400 >

この作品をシェア

pagetop