あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「そうでも言わないと、萌香はもう一度家に来てくれなかっただろう?」
さっきとはうって変わって、真面目な表情をした佐川さん。
「萌香を捕まえるのは大変なんだぜ。俺の苦労、分かっている?」
そう言って佐川さんは私の頭を撫でた。
「だましたのは悪かった。でもどうしてもこの週末は萌香と過ごしたかった。」
佐川さんは私の両肩を掴んだ。
真正面に来る佐川さんの顔。
昨日から何度もそんな場面はあったけど、こればかりはやっぱりなかなか慣れない。
私はそんな佐川さんの顔を見つめるばかり。
「とにかく準備をしてくれないか。俺の家に行ったらちゃんと話すから。」
私はその迫力に負けて、こっくりとうなずく。
そして佐川さんから離れると、ひたすら荷物を準備し始める。
その様子をホッとしたように眺めている佐川さん。
私は機械的に少しでも必要を感じた物を鞄に詰めていく。