あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「どうして、佐川さんって呼ばれているわけ?」
不思議そうにそんな事を言う透さん。
「だからまだちゃんと言ってないんだ。」
佐川さんは溜息をつきながら、私を見る。
「いろいろとタイミングが悪くてさ。」
そんな弱音の声を出す佐川さんに、透さんはぎょっとした声を出す。
「どうしたんだ、郁也らしくないな。」
「そうだろう。俺の段取りは狂いっぱなしなんだ。萌香は俺の思う通りに物事を進めさせてくれないんだ。」
私は思いきり佐川さんの方を振り返った。
「私?私、佐川さんに何かしましたか?」
私の焦った声に、運転しながら思いきり吹き出した透さん。
「郁也のそんな姿、初めて見るよ。相当やられているみたいだな。」
ミラーで透さんは私達の様子を伺っているみたいだ。
「ああ、俺自身も驚いているよ。」