あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私は二人の会話に全くついていけない。

私は諦めて、二人の声が耳に入らないように、外の流れる景色をぼんやりと眺めた。

「おい、着いたぞ。」

放心状態だった私に佐川さんが声をかけた。

「あっ…、はい。」

外の景色を見ていたはずなのに、到着した事に気が付かないなんて…。

もう既に体半分ほど車から降りている佐川さんはクスリと私を見て笑う。

昨日初めてお邪魔したマンション。

やっぱり何度見てもすごい。

佐川さんは先に部屋に入って行ったようだ。

透さんは、佐川さんの家まで私の荷物を運んでくれると、玄関先で私に耳打ちした。

「大事な従兄をよろしくお願いしますよ。」

そして意味あり気に私に目くばせすると、部屋の中に居る佐川さんに声をかけた。

「これで帰るよ。」
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