あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「ああ、ありがとう。」
佐川さんの声が聞こえた。
そして私に目を合わせると透さんは笑った。
「このすぐ下の階に住んでいるから、困った事があったら連絡してね。」
そう言ってまだ唖然としている私の目の前で玄関のドアが閉まった。
「萌香。」
佐川さんがもう一度玄関に戻って来て、私を優しく呼んだ。
いつものように手を引っ張られて、部屋の中へ入っていく。
リビングの中は、コーヒーのいい匂いに包まれていた。
キッチンにあるコーヒーメーカーの方に歩き出す佐川さんを見て、私は後を追いかける。
「私が淹れましょうか。」
そう聞くと、佐川さんはマグカップを二つ出してきた。
そこへたてたばかりのコーヒーを注ぐ。
そしてマグカップを一つ佐川さんに渡した。