あなたに包まれて～私を分かってくれる人～
「ありがとう。」

そう言ってもらって、私はふっと気持ちが和む。

私ももう一つのマグカップを持って、昨日座ったソファに二人で座った。

「聞いてくれるか？萌香。」

そう優しい表情で私を見た佐川さんに、私はうなずく。

「俺がじいさんと親父から前倒しして会社に戻って来いと言われたのは、かれこれ3か月前だった。その時にはこっちの社長にも迷惑をかけるから、半年後、そう秋頃退職する予定だった。」

そして佐川さんはここでマグカップに口をつけた。

そしてにっこりと私に微笑む。

「しかしその数日後、じいさんが倒れた。病気ではなく過労だったんだが、その時に軽いが肝臓に疾患が見つかってな。じいさんはしばらく入院する事になった。結局そういう訳で、俺は急に山中建設に帰る事になった。社長と相談して、最短の今月いっぱいで退職という形になった。」

ちょっと難しい顔をした佐川さんはそのまま話を続ける。

「…それから俺はおかしくなったんだ。正直山中建設に帰って仕事が出来る事を待ちわびていたはずなのに、どうも自分の中で何かが引っかかるんだ。」

そしてチラッと私を佐川さんは見た。

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