初恋マネジメント
レッスン 1
「……先輩、俺、本気で恋しちゃったみたいなんすけど……」
苦しそうな低い声で溢れんばかりの甘い思いを吐露したのは、学校一のイケメンでチャラ男と評判の三橋秀也(ミハシシュウヤ)だ。
お昼休み、学年がひとつ下の彼に呼び出されたのは、人気のない4階美術室。
「そ、そ……んなこと急に言われても……っ」
色っぽい瞳は瞬きもせずにあたしを見詰めて、それからじわじわと距離を詰めてきたから、慌てて後ずさる。
そのうちにいつの間にか壁際に追いやられていて、身長差を埋めて屈んだ三橋くんの綺麗な顔がすぐ近くにあった。
その色気にゾクゾクする。
「……俺、今まで女なんてみんな同じだって思ってたんすけど……、マジでこんな風に人のこと好きになるの初めてで……どうしたらいいかわかんねっす……」
「あたしだって、そんなの……し、知らないよ……っ」
とんっと優しい音がして顔を上げれば、壁に手をついた彼のせいでいよいよ逃げ道はなくなっていた。
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