初恋マネジメント
「……紗奈先輩、どうしてもだめ?」
あたしがそうしている間に薄暗い公園内でブランコを降りた三橋くんは、あたしの正面にしゃがみこんで顔を覗き込んできた。
こっちは怒っていたはずなのに、不安そうで寂しそうなその表情を見てしまっては、うっかり母性本能をくすぐられそうになる。
イケメンだからって、そんな顔作っとけば何もかも許されると思うなよ……!
「……わっ、悪いけど、あたしには無理。他あたって」
「……そっか。無理言ってすみません。……ダメならしょうがないですよね」
……うっ!
途端にしゅんとして、がっくり肩を落とした三橋くんに若干の罪悪感が湧いた。
いや、あたし悪くないよね? よね! よね!?
――なんて思ったのも束の間で。
「……しょうがないんで、キャプテンに部活後紗奈先輩が冷えピタ大事に折り畳んで家に持ち帰ろうとしてたこと言っておきますね……」
「ちょっと待て」
――すぐにそれは殺意に変わった。
なんで知ってる!? こっそり誰にも見られないように、ごみ箱に捨てたふりすらしたのに……!
「じゃあそれが嫌なら紗奈先輩、協力お願いしますね!」
「……喜んで」
チクショウこの野郎いつか痛い目見せてやる!
パアッと笑顔になった三橋くんに愛想笑いを返したあたしが、こっそり心の中でそう誓ったことは、誰も知る由がない。