初恋マネジメント




「……なんかあった?」




ほんとはなんとなく察しがつくけれど、敢えて気付かないふりをして訊いたあたしは狡い。



バカみたいに明るい健太が悩むことなんて、優花ちゃんのこと以外で他にはないことを、あたしは知ってるのに。



ごめんね、健太。


心の中で謝るけれど罪悪感は消えなかった。




「……聞ーてよ紗奈ー」


「何よ」


「うーん、やっぱいい……」


「ほら、悩むくらいなら言いなって!」




無理やり促すけれど、まだ渋る健太はその後数分悩んだ挙句にようやく重たい口を開く。




「……今日のデート、優花にドタキャンされた」


「……っ」




その言葉に頭を鈍器で殴られたような衝撃が走って、思考が停止する。




『明日はバスケ部休みなんで、勇気出して優花さんのこと遊びに誘ってみます』

て、三橋くんが意気揚々と宣言していたのは昨日の話だ。




脈がいつもより早鐘を打っているのが自覚できた。




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