初恋マネジメント



本当は諦めたかったのはあたしの方だ。



ごめんね、と心の中だけで謝って、ゆっくり席を立つ。




「……紗奈先輩?」


「……トイレ行ってくるだけだから、……先に食べててよ」


「……はい」




それから不安そうにあたしを見上げる三橋くんの目を、しっかり見て言う。


パッと笑顔になる彼からぎこちなく目をそらした。



……健太に対しても、三橋くんに対しても、随分中途半端な気持ちのままで接してきてしまっていたのだなと思う。



宣言通り店の奥のお手洗いに入って、可愛くないあたしの顔を映す鏡の中を覗き込んだ。



本当はあたし、どうしたいのだろう。


三橋くんの恋愛を手伝うって言ってしまったのは、本当は心の奥底では、健太の失恋を願ってたからなのかな。



……それは悪いことじゃないのだろうか。



ああ分かんない。


三橋くんみたいに迷うことなく真っすぐ、好きって気持ちを暴露できたならきっと気持ちいだろうに。



できないからつらい。



……とりあえず早く戻らなきゃ。


パンケーキが冷めてしまってはせっかくの奢りが台無しだ。



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