初恋マネジメント
その髪の毛をさりげなく撫でてあげれば、あたしにしがみつく彼の力はより一層強まった。
「……しょうがないから、あんたが立ち直るまではそばにいてあげる」
「……紗奈先輩大好き」
「それはありがとう。また前みたいに三橋くんが女の子取っ替え引っ替えしてるとことか、見たくないしね」
「……昔のことはとっくに反省してるんで言わないでくださいよー! 意地悪いですね紗奈先輩」
「あんたは信用ならないもん」
「ひっどいなー。もう本気の愛を知っちゃったんで、優花さんにフラれたからってチャラチャラするつもりないすよ」
「ふ」
本気の愛ねえ。
思わず吹き出してしまい、三橋くんは拗ねたようにこちらをじっと見上げてくる。誤魔化すために慌ててまた頭を撫でてあげたら人懐こく笑ってくれた。ちょろすぎ。
……それにしても。
天下の三橋秀也ですらこんなにショックを受けているのに、と思い出すのはヘタレの幼馴染のことだ。
健太があの場にいたらどうなっていたんだろう。あんなに優花ちゃんのことを大事に思ってたのに。
やっぱり許せない。明日ちゃんと優花ちゃんと話し合おう。何かの間違いであってくれればそれが一番いいんだ。
そう決めて、遠くの夕日をぼーっと眺めた。