枯れた白薔薇がもう1℃の恋をする
1章 『つながり』

『父と母』




1 『父と母』



母はとても優しい人でした。
いつも笑顔で、穏やかで。
手なんて1どもあげられたことなんてありません。


そして、強い人でした。
母が弱音をはいたり、泣いたりした姿は
私は1どもありません。




いいえ。
ありませんでしたー・・・






「あなた・・・」




「・・・」

「お、かあさん・・・」

「・・・。」





今の今までは1度も。
父にすがりつき、
まるで音をなくしたように
なだれ込むように父に覆いかぶさり、
抱きしめる母。



泣いています。
母はいま、
泣いています。



でもその涙は、枯れています。




行き場をうしなって、
父に覆いかぶさった白い布が、
かれさせていくのです。






その姿は、まるでバラでした。







白い服を身にまい、
横たわっている父よりも







母のほうが、白い枯れたバラに見えたのです。









それは、もう目を開けることのない
父よりも、母の死を予期してるように





私たち姉妹にはみえたのです。




その怖さに
末の妹が母を呼びます。
それを静止させるように、おねえちゃんが手を握るのです。




そして真ん中の私は
横たわってもう、動かなくなった父に
「母さんを頼む」といわれた気がしたのです。






そこで私は気づくのです。
枯れることの知らない白い0℃(穏やかな)のバラ(母)は






父(花壇)に守られていたということに。






枯れて折れてしまった母は





これからいったい







誰が支えるのでしょう。














~母の体温は父が守っていたのですね~

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