短編集 ~一息~
『プロローグ』
ある山に、野犬の群れと日本猿の群れが住んでいた。
お互いが自分たちのテリトリーを主張し、尚且つ実力は拮抗状態。争うと必ず負傷者が出て、勝敗は決まらなかった。
これでは損はあっても得がない。
両者のリーダーはようやく争いが無駄と知り、顔を合わせて話し合う時間をもった。
はじめに日本猿のリーダーが、野犬のリーダーに案を出した。
「このまま争うだけでは互いに飢え死にするだけだ。ここは互いに助け合おうじゃないか」
日本猿のリーダーの案に、野犬のリーダーが答えた。
「助け合うのはいいが、山に食料が不足していることに変わりはない。我々だけではどうにもならないぞ」
野犬の群れと日本猿の群れが食料を取り合ってきたために、獲物も山の幸も見つけることが困難になり始めていたのだ。
二匹は事態を重く見た。このままでは全滅してしまう。自分の群れも相手の群れも――。
「もう、他の者に助けを求めるしかない」
二匹の答えが一致した時、頭の上から羽ばたきが聞こえた。
「お、奇妙な取り合わせだね。君たち、人間がいう犬猿の仲とかいうやつじゃないの」
二匹は突然現れた、赤い顔の鳥を睨みつける。
「今、腹が減って苛立っているんだ。喧嘩をうるつもりなら食ってしまうぞ」
「いや待て、翼がある奴なら、俺たちよりいろいろなことを知っているに違いない。食われたくなければ、何かうまい話を教えてくれないか」
攻撃的な野犬と問いかけてきた日本猿を相手に、鳥は首を傾げながら、さらりと答えた。
「うまい話なら、人間の仲間になるといいよ。ちょいとした噂を聞いてね。僕に付いてきてくれるなら、君たちの群れのことも何とかなると思うよ」
鳥の話に野犬と日本猿は顔を見合わせた。人間の仲間になるというのは、ちょっと考え難いが、美味しい物にありつけて、しかも群れも何とかなるというのなら申し分ない。
「うむ……いい話だな。では、その話にのるか。ところで、うまい話というのは?」
同意した野犬と日本猿は、うまい話と聞いて舌舐めずりをする。
そんな二匹に鳥は言った。
「何でも有志を募っているみたいなんだよね。悪い奴を退治するとか言ってさ。美味しそうなキビ団子を持っていたみたいだから、仲間にしてもらう代わりに貰えるんじゃないかな。君たちケーン猿の仲が実は良いってことも、人間たちに語り続けられると思うよ」
ある山に、野犬の群れと日本猿の群れが住んでいた。
お互いが自分たちのテリトリーを主張し、尚且つ実力は拮抗状態。争うと必ず負傷者が出て、勝敗は決まらなかった。
これでは損はあっても得がない。
両者のリーダーはようやく争いが無駄と知り、顔を合わせて話し合う時間をもった。
はじめに日本猿のリーダーが、野犬のリーダーに案を出した。
「このまま争うだけでは互いに飢え死にするだけだ。ここは互いに助け合おうじゃないか」
日本猿のリーダーの案に、野犬のリーダーが答えた。
「助け合うのはいいが、山に食料が不足していることに変わりはない。我々だけではどうにもならないぞ」
野犬の群れと日本猿の群れが食料を取り合ってきたために、獲物も山の幸も見つけることが困難になり始めていたのだ。
二匹は事態を重く見た。このままでは全滅してしまう。自分の群れも相手の群れも――。
「もう、他の者に助けを求めるしかない」
二匹の答えが一致した時、頭の上から羽ばたきが聞こえた。
「お、奇妙な取り合わせだね。君たち、人間がいう犬猿の仲とかいうやつじゃないの」
二匹は突然現れた、赤い顔の鳥を睨みつける。
「今、腹が減って苛立っているんだ。喧嘩をうるつもりなら食ってしまうぞ」
「いや待て、翼がある奴なら、俺たちよりいろいろなことを知っているに違いない。食われたくなければ、何かうまい話を教えてくれないか」
攻撃的な野犬と問いかけてきた日本猿を相手に、鳥は首を傾げながら、さらりと答えた。
「うまい話なら、人間の仲間になるといいよ。ちょいとした噂を聞いてね。僕に付いてきてくれるなら、君たちの群れのことも何とかなると思うよ」
鳥の話に野犬と日本猿は顔を見合わせた。人間の仲間になるというのは、ちょっと考え難いが、美味しい物にありつけて、しかも群れも何とかなるというのなら申し分ない。
「うむ……いい話だな。では、その話にのるか。ところで、うまい話というのは?」
同意した野犬と日本猿は、うまい話と聞いて舌舐めずりをする。
そんな二匹に鳥は言った。
「何でも有志を募っているみたいなんだよね。悪い奴を退治するとか言ってさ。美味しそうなキビ団子を持っていたみたいだから、仲間にしてもらう代わりに貰えるんじゃないかな。君たちケーン猿の仲が実は良いってことも、人間たちに語り続けられると思うよ」