短編集 ~一息~
『人間社会』
――とある家のキッチンで、ひとつの小さき会議が行われようとしていた。
「では、本日の議長。イヌくん!」
鳥かごの中にいるインコの指名で、イヌが前に進み出る。
「では会議をはじめよう。ネコくん、金魚さんも……よろしいかな」
全員が緊張した様子で、首を縦に振って答える。イヌは確認すると会議をはじめた。
「それでは本日の議題について。議題提出者は金魚さんとインコくんだ。ネコくんの行動が横暴すぎる。僕たちを引っかき回さないでほしい! うむ、確かにこれは深刻な問題だ。では、どちらの言い分が正しいか多数決をとろう。ネコくんが正しいと思う者は手をあげたまえ!」
手をあげたのはネコ一匹だけ。彼の行動が間違っているほうに他の全員が手をあげた。
「では次! ネコくんが発情期に騒ぐのは迷惑だ。少し静かにしろ。うむ、では多数決を……」
イヌが他の全員に挙手を求めようとした時が、ネコの我慢の限界だった。
「待てよ、さっきから俺のことばっかり! 俺をのけものにする気か? いいよ、そのつもりなら。俺を受け入れてくれる家ならある。そこに入ればいいだけだからな!」
それだけ吐き捨てると、ネコは家を出て行ってしまった。我が儘ばかりだった一員が外に出たのを見て、議長の犬が息を吐く。
「……よし、うまくいったな。人間がやる多数決とやらでひらめいて、実行に移したのが功を奏した。うちを乱す荒れくれ者がいなくなって清々したよ」
インコも金魚も喜んだ。これでネコの機嫌を見て生活する必要はなくなったのだ。
――と、そこで動きをとめたイヌは、ふと思いついてインコと金魚に訊いた。
「そういえば、あいつ……自分を受け入れてくれる家があるって言っていたよな……これは人間の世界でいうと、離党した議員が新党を結成するってことでいいのかい?」
――とある家のキッチンで、ひとつの小さき会議が行われようとしていた。
「では、本日の議長。イヌくん!」
鳥かごの中にいるインコの指名で、イヌが前に進み出る。
「では会議をはじめよう。ネコくん、金魚さんも……よろしいかな」
全員が緊張した様子で、首を縦に振って答える。イヌは確認すると会議をはじめた。
「それでは本日の議題について。議題提出者は金魚さんとインコくんだ。ネコくんの行動が横暴すぎる。僕たちを引っかき回さないでほしい! うむ、確かにこれは深刻な問題だ。では、どちらの言い分が正しいか多数決をとろう。ネコくんが正しいと思う者は手をあげたまえ!」
手をあげたのはネコ一匹だけ。彼の行動が間違っているほうに他の全員が手をあげた。
「では次! ネコくんが発情期に騒ぐのは迷惑だ。少し静かにしろ。うむ、では多数決を……」
イヌが他の全員に挙手を求めようとした時が、ネコの我慢の限界だった。
「待てよ、さっきから俺のことばっかり! 俺をのけものにする気か? いいよ、そのつもりなら。俺を受け入れてくれる家ならある。そこに入ればいいだけだからな!」
それだけ吐き捨てると、ネコは家を出て行ってしまった。我が儘ばかりだった一員が外に出たのを見て、議長の犬が息を吐く。
「……よし、うまくいったな。人間がやる多数決とやらでひらめいて、実行に移したのが功を奏した。うちを乱す荒れくれ者がいなくなって清々したよ」
インコも金魚も喜んだ。これでネコの機嫌を見て生活する必要はなくなったのだ。
――と、そこで動きをとめたイヌは、ふと思いついてインコと金魚に訊いた。
「そういえば、あいつ……自分を受け入れてくれる家があるって言っていたよな……これは人間の世界でいうと、離党した議員が新党を結成するってことでいいのかい?」