ラヴィアン王国物語
 アイラ側からは太陽が眩しくてよく見えない。
奴隷買いの王子なんか見たくないが。

「第一王子ルシュディと、第二王子ラティーク。うほ、両方いやがる」

 ほくほくと嬉しがったスメラギの脛を軽く蹴飛ばした。

「人の国の秘宝をしゃあしゃあ奪っといて暢気って話よ。あいつらのどちらかが」
「姫様。聞こえますわ。ほら、こっち見てる。第一王子さま。ちょっとイイかも」
「どこが。サシャーの好み、分からない。あたしはあっちの�あくび�のほうが」

 アイラはチラと視線を向けた。スメラギが偉そうに、指示をしている。時には交渉し、
手もみして、ちゃっかりと金額をつり上げては、次々引き渡す。

「私の部屋の、花の水やりをお願いしたいのだが」

(ふうん、ちゃんと選んでる。人不足なのかな。うふ、花にお水、だって)

 もっと非人道的なやり取りを想像していたが、彼らラヴィアン側は「**できる人間」
と職に合わせて決めているらしく、奴隷というより、職斡旋している風景に近い。

「え? あたしですか? ハァ、象のお世話……」
早速サシャーが呼ばれて行った。さっきの子供も、優しそうな男に連れられて消えた。

(……拍子抜け。なんだか、本当に�まとも�な感じね)

「奴隷ってシリぶっ叩かれて、掃除ばっかりさせられると思ってたけど、違うのね」

「そりゃ、おまえのアタマが激し過ぎらぁ。あー、ラヴィアンで商売してぇなァ……」

 スメラギはアイラとの軽口に応じた後、「さあさあさあ! お立ち会い!」と手を叩いた。

「今回のラストは海の国の娼婦! どんな男でも悩殺する娼婦! 理想の女神を演じる娼
婦! 今回の目玉ッスよ〜! さあさあさあ、いくらで行きます?」

 ——あら、凄い娼婦。

(どんな男でも? ふうん? チッパイのあたしには無関係。きっと立派なオッパイを持
っているに違いない。一目くらい、睨んでやろうか)

 振り返ったところ、どうやらぽつねんとアイラだけが一人だけで立っている様子。
(あたししかいないじゃない……娼婦はどこよ。まさか)

 目を見開いて、冷や汗無言で自分を指すと、スメラギはにっと笑った。


「好都合だぜ。第二王子アル・ラティーク・ラヴィアンのエロ野郎。ほら、あの椅子でふ
んぞり返ってる。汚ねぇランプ下げてるヤツ。さあ、腕が鳴るぜ! 
上玉、売りつけてやろうぜ! 行くぜ、上玉ァ!」
< 10 / 62 >

この作品をシェア

pagetop