ラヴィアン王国物語
大きく空間を空けた天井からぶら下がる高級そうなタペストリは金糸と銀糸で丁寧に編まれている。金の鎖を巻き付けた柱には、水晶が埋め込まれて輝いていた。透かし彫りを施した豪華な大理石の床には、砕かれた宝玉。点々と散らかった衣服に足を取られてみれば、絹の柔らかさと肌触りの良さに驚かされた。
(う、何か、柔らかいモノ、踏んだ)
足を上げると、甘酸っぱい香り。葡萄だ。
「なんで、葡萄……? 歩きながら食べたのかな」
素足の裏に張り付いた葡萄の皮と格闘している内、辿り着いた宮殿の最奥では、大きな
虎と、象の彫刻を施した金の扉がアイラを待ち構えていた。
(嫌な予感……もう、既に、このド派手な扉が何だか不吉なカンジがする……)
「ラティーク樣。先ほどの、新しいシリ揉み奴隷をお連れしました」
扉がゆっくりと、両側に開け放たれた。部屋では着飾った女官がアイラと同じような服を着て、クスクス笑ってごろごろしている。働いていないのか。
ぽつんと取り残されたアイラに、一人の女がからかいまじりの声を投げてきた。
「ここは第二王子ラティーク様のハレムよ。主のラティーク王子にご挨拶なさい。そちらの垂れ幕の向こうにいらっしゃるわ。礼儀を知らない娘だね」
(こんなハレンチな場所の礼儀なんて存じません!)
挨拶に向かったが、肝心のラティークは女性の影に隠れていて、頭しか見えていない。
垂れ幕越しに窺うと、群がっている図は、まるで砂糖に集る蟻のようだ。
(あたしは、あんな蟻みたいになりたくない! でも……あの中にヴィーリビアの戻らない少女たちがいるかも知れないとしたら——)
背筋をぴんしゃんと伸ばし、足を進めた前で、寝台への天幕が持ち上げられた——。
(う、何か、柔らかいモノ、踏んだ)
足を上げると、甘酸っぱい香り。葡萄だ。
「なんで、葡萄……? 歩きながら食べたのかな」
素足の裏に張り付いた葡萄の皮と格闘している内、辿り着いた宮殿の最奥では、大きな
虎と、象の彫刻を施した金の扉がアイラを待ち構えていた。
(嫌な予感……もう、既に、このド派手な扉が何だか不吉なカンジがする……)
「ラティーク樣。先ほどの、新しいシリ揉み奴隷をお連れしました」
扉がゆっくりと、両側に開け放たれた。部屋では着飾った女官がアイラと同じような服を着て、クスクス笑ってごろごろしている。働いていないのか。
ぽつんと取り残されたアイラに、一人の女がからかいまじりの声を投げてきた。
「ここは第二王子ラティーク様のハレムよ。主のラティーク王子にご挨拶なさい。そちらの垂れ幕の向こうにいらっしゃるわ。礼儀を知らない娘だね」
(こんなハレンチな場所の礼儀なんて存じません!)
挨拶に向かったが、肝心のラティークは女性の影に隠れていて、頭しか見えていない。
垂れ幕越しに窺うと、群がっている図は、まるで砂糖に集る蟻のようだ。
(あたしは、あんな蟻みたいになりたくない! でも……あの中にヴィーリビアの戻らない少女たちがいるかも知れないとしたら——)
背筋をぴんしゃんと伸ばし、足を進めた前で、寝台への天幕が持ち上げられた——。