ラヴィアン王国物語
(今後の探索準備も兼ねてお借りしよう)
チッパイはすんなりと上着に収まった。長い上着を腰紐で縛り、ようやく人心地のついたアイラにサシャーがぼやいた。
「姫樣、それはかっぱらいと言うのでは……」
「聞こえが悪いよ。あたし、これでも王女よ。かっぱらいはないよ」
サシャーにウインクして、(確かに)と実感した本心を誤魔化し、道を急いだ。
★☆★
広大な宮殿は、三つの区画で成り立っている。中央にラヴィアン王の宮殿、右に第一王子ルシュディの宮殿、左にラティークの宮殿がある。
働く�ニンフ�の数も相当だ。担当と係を持ち、忙しく動き回っている。
「たしか、こっちにゴミ捨て場があるそうで……スゴイ規模ですわね」
「そうね〜。どうやって探そうかな。広すぎるね」
人は動くが、石はうんともすんとも言わない。代わりに置き場所の見当はつく。
宝石庫か、それとも先祖代々の廟に祭られたか。アイラは眉を寄せて唸った。動かない宝石の探索は難しい。後にしよう。
「ラティークの第二宮殿にはヴィーリビアの女性は一人もいなかったの。とすれば、王サマの宮殿か、第一宮殿になるよね」
「王樣の宮殿にまで忍び込むつもりですか! ……あ、ここですね。よいしょ」
サシャーは見えた土山の手前で手車を倒し、また余った土を載せた。文句を言わずに汚れ仕事をこなしてはいるが、サシャーも、ヴィーリビアではそこそこの巫女。
済まない気持ちになって、アイラはせこせこ動く、サシャーの背中に手を乗せた。
「付き合わせて、ごめんね。一緒に探してくれる?」
「任せてくださいまし! あたし、こういう動物のお世話、結構好きみたいですよ」
サシャーはぼよんとした胸を叩いた。
「第一宮殿には、強い女の人ばかりが犇めいていて。あたし、ルシュディさまのハレムに呼ばれなくてほっとしました。背が小さいから、王子の好みには遠いんですって」
「ハレム、ハレム、ハレム! あぁ、その言葉、聞きたくない」
「姫様……まさか、既に」言いつつ目が期待に染まっている。
「ラティークはバカ王子だと分かっただけ。収穫ナシよ」
告げて、アイラは爪先を打ちつけた。
「なぁにが、僕の魔法にかかった、よ! ふざけるんじゃない」
つい先ほどの話が、今度は苛々と寂しさを連れてきた。あくび王子。熱射病で喘いでいた。金色に透けて綺麗だった……ちょっと見惚れた。
チッパイはすんなりと上着に収まった。長い上着を腰紐で縛り、ようやく人心地のついたアイラにサシャーがぼやいた。
「姫樣、それはかっぱらいと言うのでは……」
「聞こえが悪いよ。あたし、これでも王女よ。かっぱらいはないよ」
サシャーにウインクして、(確かに)と実感した本心を誤魔化し、道を急いだ。
★☆★
広大な宮殿は、三つの区画で成り立っている。中央にラヴィアン王の宮殿、右に第一王子ルシュディの宮殿、左にラティークの宮殿がある。
働く�ニンフ�の数も相当だ。担当と係を持ち、忙しく動き回っている。
「たしか、こっちにゴミ捨て場があるそうで……スゴイ規模ですわね」
「そうね〜。どうやって探そうかな。広すぎるね」
人は動くが、石はうんともすんとも言わない。代わりに置き場所の見当はつく。
宝石庫か、それとも先祖代々の廟に祭られたか。アイラは眉を寄せて唸った。動かない宝石の探索は難しい。後にしよう。
「ラティークの第二宮殿にはヴィーリビアの女性は一人もいなかったの。とすれば、王サマの宮殿か、第一宮殿になるよね」
「王樣の宮殿にまで忍び込むつもりですか! ……あ、ここですね。よいしょ」
サシャーは見えた土山の手前で手車を倒し、また余った土を載せた。文句を言わずに汚れ仕事をこなしてはいるが、サシャーも、ヴィーリビアではそこそこの巫女。
済まない気持ちになって、アイラはせこせこ動く、サシャーの背中に手を乗せた。
「付き合わせて、ごめんね。一緒に探してくれる?」
「任せてくださいまし! あたし、こういう動物のお世話、結構好きみたいですよ」
サシャーはぼよんとした胸を叩いた。
「第一宮殿には、強い女の人ばかりが犇めいていて。あたし、ルシュディさまのハレムに呼ばれなくてほっとしました。背が小さいから、王子の好みには遠いんですって」
「ハレム、ハレム、ハレム! あぁ、その言葉、聞きたくない」
「姫様……まさか、既に」言いつつ目が期待に染まっている。
「ラティークはバカ王子だと分かっただけ。収穫ナシよ」
告げて、アイラは爪先を打ちつけた。
「なぁにが、僕の魔法にかかった、よ! ふざけるんじゃない」
つい先ほどの話が、今度は苛々と寂しさを連れてきた。あくび王子。熱射病で喘いでいた。金色に透けて綺麗だった……ちょっと見惚れた。