ラヴィアン王国物語
散々心で言い訳をして、一度は置いた、窓際のアイラ特製果物皿を持ち上げた。
少年精霊シハーヴがひょいと顔を見せた。
「ありがと。全部落として大変になるところだった。オレンジ、拾ってくれたでしょ?」
「運んでやる」
シハーヴは嬉しそうに告げると、指先で小さな丸を描いた。ほどよく皿がアイラの手から浮かんだ。アイラは持っている振りをして歩き出した。皿もふよふよついてきた。
☆★☆
流砂の音がする中、アイラとシハーヴは並んで回廊を歩き始めた。シハーヴは眠そうに眼を何度もしばしばと瞬きした。
「眠そうなところまで、そっくり。ランプに戻って休んだら?」
シハーヴはキロ、と精霊の真っ赤な目でアイラを睨んだ。
「戻ろうにも、ラティークが、僕を呼び出しておいて、ランプに戻すの忘れて、肝心のランプぶら下げたまま出かけたんだよ! どこにいるのか見つからないんだ」
(なるほど。家を持ち出されて、戻れないんだ。精霊野放しにして何やってるんだか。ラティークは)
ラティークへのちょっぴりの怒りを察したか、シハーヴは唇を尖らせた。
「第一宮殿を探れなんて言うんだ。虎の姿で見て来たところ。あそこ、ヤバイよ。闇の精霊がいる気配」
甘えたな声と口調は、ラティークそのもの。
(なんだか、不憫だ。世の中にはもっと素敵な人もいるだろうに……)
アイラは遠くに見える第一宮殿に視線を移した。第二宮殿の趣味の悪い金銀ギラギラの装飾と違って、落ち着いた色合いの、歴史を重ねた宮殿……。
「有り得ないわ。仮に闇の精霊がいるとしても、大人しく従うはずがない。それにもっと大きな資格と、強い素質が必要なはずよ」
「人間の決めた資格だろ。ぼくらには本来無関係。いつからそうなったのかな。こんな道具に縛り付けられてさ。契約なんて分からないし、ラティークがまた無理矢理で。お陰で散った仲間を探しにも行けやしない」
風の精霊はお喋りが好きらしい。シハーヴはちょこちょこアイラに話しかけて来た。
(そうか、この子、一人ぼっちなんだ……ラティーク、分かってるのかな)
考えて、うんざりした。ラティークは何も分かってない。シハーヴの魔法を利用しているだけで。
少年精霊シハーヴがひょいと顔を見せた。
「ありがと。全部落として大変になるところだった。オレンジ、拾ってくれたでしょ?」
「運んでやる」
シハーヴは嬉しそうに告げると、指先で小さな丸を描いた。ほどよく皿がアイラの手から浮かんだ。アイラは持っている振りをして歩き出した。皿もふよふよついてきた。
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流砂の音がする中、アイラとシハーヴは並んで回廊を歩き始めた。シハーヴは眠そうに眼を何度もしばしばと瞬きした。
「眠そうなところまで、そっくり。ランプに戻って休んだら?」
シハーヴはキロ、と精霊の真っ赤な目でアイラを睨んだ。
「戻ろうにも、ラティークが、僕を呼び出しておいて、ランプに戻すの忘れて、肝心のランプぶら下げたまま出かけたんだよ! どこにいるのか見つからないんだ」
(なるほど。家を持ち出されて、戻れないんだ。精霊野放しにして何やってるんだか。ラティークは)
ラティークへのちょっぴりの怒りを察したか、シハーヴは唇を尖らせた。
「第一宮殿を探れなんて言うんだ。虎の姿で見て来たところ。あそこ、ヤバイよ。闇の精霊がいる気配」
甘えたな声と口調は、ラティークそのもの。
(なんだか、不憫だ。世の中にはもっと素敵な人もいるだろうに……)
アイラは遠くに見える第一宮殿に視線を移した。第二宮殿の趣味の悪い金銀ギラギラの装飾と違って、落ち着いた色合いの、歴史を重ねた宮殿……。
「有り得ないわ。仮に闇の精霊がいるとしても、大人しく従うはずがない。それにもっと大きな資格と、強い素質が必要なはずよ」
「人間の決めた資格だろ。ぼくらには本来無関係。いつからそうなったのかな。こんな道具に縛り付けられてさ。契約なんて分からないし、ラティークがまた無理矢理で。お陰で散った仲間を探しにも行けやしない」
風の精霊はお喋りが好きらしい。シハーヴはちょこちょこアイラに話しかけて来た。
(そうか、この子、一人ぼっちなんだ……ラティーク、分かってるのかな)
考えて、うんざりした。ラティークは何も分かってない。シハーヴの魔法を利用しているだけで。