ラヴィアン王国物語
ルシュディは広げられたナツメヤシの葉の上の料理には手も伸ばさず、ずっと隣にいる男とヒソヒソ話を繰り広げている。宴なんて楽しんでもいない雰囲気だ。
舞台がはねた後、踊り子たちに混じって、アイラは酒瓶を手に取った。
(ちょうどいい。あたしも探り出してみようか)
ヒラヒラの服を揺らして、酒瓶を手に、注いで回る列に加わった。ルシュディお気に入りの八人の徳妃たちは皆、豊満でスレンダーだ。奥に、黒いトーブを被って、スリットから美しい足を放り出している女性が座って煙管を吹かしていた。
(見つけた! レシュだ。あたしの親友!)
気怠げな眼に、変わらない冷静な笑みを浮かべている、黒鮫のような、真っ黒いトーブに身を包んだかつての親友は、神殿にいた時と別人だった。
アイラの視界から、シハーヴが全速力で逃げて行った。
「シハーヴ!」ピク、とルシュディの隣の男が動いた。(しまった! 名前を!)焦るアイラの前で、ルシュディが発声した。あまりの冷酷な響きに足が竦んだ。
「放っておけ。ラティークの飼い猫だ。私は部屋へ戻る。行くぞ」
呼ばれた女性は、煙管を置き、立ち上がった。
(行ってしまう!)
「レシュ、レシュだよね? あたしよ。ねえ、貴女、どうしちゃったの?」
慌てて声をかけた。女性はアイラを一瞥し、黒く塗り潰した唇で冷ややかに答えた。
「わたしは、貴方など、知らないが」
ルシュディの氷の視線に射貫かれ、アイラは再び硬直した。
居竦んだアイラに、先ほどルシュディと会話していた男が近寄ろうとしたが、アイラは涙を堪えて立ち去った。
後からシハーヴが慌ててアイラを追って来た。
(やっと出逢えたのに! あんな冷たい対応ってない!)
「レシュ、どうしてよ……っ! あたしが分からないって!」
豹変した親友の姿に、アイラは胸騒ぎを感じずにいられなかった。
舞台がはねた後、踊り子たちに混じって、アイラは酒瓶を手に取った。
(ちょうどいい。あたしも探り出してみようか)
ヒラヒラの服を揺らして、酒瓶を手に、注いで回る列に加わった。ルシュディお気に入りの八人の徳妃たちは皆、豊満でスレンダーだ。奥に、黒いトーブを被って、スリットから美しい足を放り出している女性が座って煙管を吹かしていた。
(見つけた! レシュだ。あたしの親友!)
気怠げな眼に、変わらない冷静な笑みを浮かべている、黒鮫のような、真っ黒いトーブに身を包んだかつての親友は、神殿にいた時と別人だった。
アイラの視界から、シハーヴが全速力で逃げて行った。
「シハーヴ!」ピク、とルシュディの隣の男が動いた。(しまった! 名前を!)焦るアイラの前で、ルシュディが発声した。あまりの冷酷な響きに足が竦んだ。
「放っておけ。ラティークの飼い猫だ。私は部屋へ戻る。行くぞ」
呼ばれた女性は、煙管を置き、立ち上がった。
(行ってしまう!)
「レシュ、レシュだよね? あたしよ。ねえ、貴女、どうしちゃったの?」
慌てて声をかけた。女性はアイラを一瞥し、黒く塗り潰した唇で冷ややかに答えた。
「わたしは、貴方など、知らないが」
ルシュディの氷の視線に射貫かれ、アイラは再び硬直した。
居竦んだアイラに、先ほどルシュディと会話していた男が近寄ろうとしたが、アイラは涙を堪えて立ち去った。
後からシハーヴが慌ててアイラを追って来た。
(やっと出逢えたのに! あんな冷たい対応ってない!)
「レシュ、どうしてよ……っ! あたしが分からないって!」
豹変した親友の姿に、アイラは胸騒ぎを感じずにいられなかった。