ラヴィアン王国物語
(好きだったよ。第二宮殿。だが、このくらいしないと、兄を、何もかもを、取り返せは
しないだろう。僕の決意が揺らいでしまわないように、消したんだ……)
「これは、宣戦布告。第二王子ラティークは、ガネーシャの神々と同じ、一度死ぬとしよ
う。アイラ。両手拳で僕を殴ろうとするのは止めてくれ」
アイラはまっすぐに燃える宮殿を見詰めていたが、同じく決意を込めた表情でラティークの手をゆっくりと握り返して瞳を煌めかせた。強く掴まれてラティークは自分が僅かに震えている事実に気付く。掴みきれないアイラの手に、手をそっと重ね、包み込んだ。
「安心していいよ。次に帰る時には、絶対に全てを終わらせて見せる」
(かつて、この大地は平和だったというが、嘘みたいだ)
いつから、どこから狂ったのか、眼の前の死に絶えた砂漠に答はない。
「民は必ず助ける。アイラが考えているほど、残虐な結果にはならない。生きていないと精霊召喚は無理だ。水の精霊を呼び戻すがため。ヴィーリビアの巫女を所望したもそのためだからね。毎日祈りを捧げさせている。また水の精霊が戻るように」
「じゃあ、皆はあの扉の向こうで泣き叫んだり、酷いことされたりはない?」
「ない。ただし、操られている可能性はある。皆のところへ戻ろう」