ラヴィアン王国物語
★★★

 アリザムと合流し、砂漠を進むも、砂風が邪魔をして視界を遮り始め、ラティークは駱駝を止めた。

(凄い砂の嵐……砂が波のよう)

とアイラはラティークのマントの影から景色を窺う。

「風が出て来た。風には風だ。おい、起きろ、シハーヴ、出て来い、仕事だ」

 ラティークが、ゴン! とランプを殴ると、子供姿のシハーヴが現れた。
「精霊!」と驚きで目を瞠ったアリザムには構わず、ラティークは駱駝から降りて、シハーヴの子供目線に合わせてしゃがみこんだ。シハーヴはむっとラティークを睨んでいた。

「なんだよ。出てくんなって言ったくせに。殴って喚ぶの、止めろってば」
「長い昼寝だっただろう。風に乗せて僕らをまとめて飛ばせ」

 シハーヴはそっぽを向いた。耳飾りを揺らして簡単に降参した。

「無〜理。重さに耐えられないし、命の保障はできない」

「何とかしろよ、精霊なんだから」
 ラティークは精霊には横柄な口調になる。シハーヴは唇を尖らせたが、

「そうだ! 風のじーさんなら」とすぐに砂漠に向いた。


「じーさん……じーさーーーーん! 横暴な主人が無理を言うんだーっ! 助けて」

「横暴?」とラティークが眉を寄せ始めた。

(あ、シハーヴに以前聞いた。砂漠で現役を退いた風の爺さんが働いていると言っていた。
主もない砂漠の砂を動かし、砂船を操っている魔神さんがいるって)

 ゴゴゴゴゴゴゴ。砂漠が大きく揺れて、緑の山がヌッと現れた。(ひぃっ)と身を縮こま
せた前で、むくりと起き上がった毛むくじゃらはあっふと大きな欠伸をした。

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