ラヴィアン王国物語
「冒険野郎でなくて、あんたはタダの守銭奴。奴隷を売る国も買う国もどうかしてる」
「ま、需要と供給だ。さりとて望む輩もいる。今回は上玉がいるからな。うっひっひ」

 唇をへの字にしたアイラにスメラギはぬふと笑って、すぐに表情を引き締めた。

 ——本当、金に目がないんだから。

 時折本気でぶっ飛ばしたくなる。構わないだろう。
 スメラギは男で、従兄弟だし、ちょっとやそっとでは死にはしない図太い性格だ。

「それはそうと、アイラ」

 青海の水平線を指したスメラギの指先を目で追った。
 水面が曲線を描いている。時折揺れ立つ波は白く砕けては、
 陽光で光って視界から消えていった。

「やっぱり、いつ見ても、海って綺麗ね……癒やされるよ」

 ほうとなった前では、いつになくスメラギが真面目に語っている。

「砂漠の下にゃ、遠い氷の国のから流れてくる大量の地下水が眠ってる。そいつが見つか
れば、砂漠なんざ消えちまう。信じられるか?」

 スメラギのうんちく説明を聞き流し、アイラは海を見詰めた。


(宝石が砕けたみたい。一つ弾けて、無数に散るの。
うん、奪われたものは全て取り返す。

来たわよ、みんな。このヴィーリビアの王女が自ら助けにね)

 大切なヴィーリビアの民、女神の手にあった宝石、信頼していた親友。
アイラの目指す目的は三つ。

うん、わかりやすくていい。

「でも、姫様。あの、勇気は認めますけど、あのラヴィアンの大国に奴隷として入り込ん
で、こそこそ王宮を探し回るより、他に方法があったと思うんですけど」
「あら、面白そうじゃない? 元凶の王子をぶっ飛ばせれば言うことなしだし」
「お手柔らかにとお伝えいたしました。姫様」

 サシャーに首を竦め、アイラは結ばれた手首を手すりに添え、ぽふ、と顎を載せた。

(ハレムとかいうワケのわからん行事に、大切な民を巻き込むなんて許せない)

 皆は無事だろうか。アイラは不安に包まれ、空を見上げた。

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