ラヴィアン王国物語
 皆が不安になった時、アイラの敬愛する親友、巫女レシュロンが颯爽と手を挙げた。

「あたしが取り返すよ、必ず戻って来る」
と旅立ち、数年が過ぎた。

「おーい」と海賊稼業を終えたスメラギが戻って来た。

 実はラヴィアンに立ち寄っていたスメラギは、アイラに一通の手紙を差し出した。

(レシュからだ……! 無事だった!)
嬉しさで貪るように手紙を読み進めた。


〔女たちは誰彼構わずハレムに連れて行かれてしまう。そうして行方が分からなくなる。
あたしも、これから調べてみる。ルシュディ王子のハレムをね。それとね、アイラ、あた
しは闇の王子……〕

続きがない。

「ね、この続き、続きは?」
うきうきと体を揺らしたアイラの前で、
スメラギはバツが悪そうに汚れた手をばばんと広げてみせた。

「悪ィ! 見ろ、俺の手汚れてて、っハハ。読めねェ! すまん!」

 手紙は滲んで解読不能だった。アイラは見るなり遠慮無くスメラギを締め上げた。

「肝心なところで何してくれんのよ! この役立たずの守銭奴海賊!」
「しゃーねーだろ! 鮫……そう、鮫だ鮫! 引き上げた時に落としちまったんだ!」

 アイラは片足を踏み出させると、ぐいとスメラギの胸元を掴みあげて凄んだ。


「あたしを奴隷船に乗せて! ラヴィアンに行く。ハレムとやらに乗り込む!」


「おいおい、チッパイ王女。ハレムが何か知ってて言ってんのか? ハレムとは王子たち
のヨメ探し。つまみ食いの場所だぜ。妻選びの宴行事で、それも、一度で数人を抱くんだ
ぜ? 男として憧れだよなァ、美女をこう……あれ? アイラ?」

 開いた口が塞がらなくなった。アイラの肩をスメラギがぽん、と叩いた。

「ラヴィアン王国の王子は二人だ。どちらかに割り振られて、帰って来ねぇんだろ。ま、
諦めろって、そのうち帰って来んだろ。奴隷にでもされてねぇ限りは」

「あたしを誰だと思っているのよ」

 アイラはチッパイを見せつけるようにふんぞり返った。
「お?」と動きを止めたスメラギの耳朶を掴み、思い切り引っ張った。

「いでぇ!」の悲鳴をぶっ飛ばす大声を張り上げた。

「ハレムなんて! 奴隷なんて認めない! 船を出して! 今、すぐに! 
秘宝、親友、民! あたしが、まとめて取り返す! 

ついでに財宝の一つや二つ、奪ってやる! 

ヴィーリビアの海賊魂ナメんじゃない。あーはっはっは! ってモンよ!」

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