ラヴィアン王国物語
(しかし、うるさいお兄が長期不在で良かった。あたしを思うあまり、艦隊派遣して海戦
などをおっぱじめられてはたまらない。お兄は過保護過ぎるんだよ)
出来すぎる兄、ヴィーリビア無敵艦隊司令長官シェザードの存在は常にアイラの頭痛の
種だ。どうしたものかと悩む前で、甲板から声が上がり始めた。聞きつけたサシャーが声
をかけてきた。
「着いたみたいですね、姫さま、姫さまァ〜?」
アイラは俯いたまま固まっている一群を眺めた。
「ねえ、どうしてみんな、下を向いて顔を上げないのかな、ほら」
「奴隷として売られる方たちです。そっとしておきましょ、ね?」
それもそうか。アイラはサシャーに頷いて座り込んだ。靜かに船が止まった。
どやどやと海賊たちが踏み込んできた。「奴隷たちを出せ」。何とも物々しい雰囲気。
「ぼけっとすんな。おまえも」とスメラギに腕を引かれ、アイラは�愁傷な振り�でのそ
のそ歩いた。
砂漠を想像していたアイラの視界に飛び込んだ風景は熱帯雨林だった。広がっているは、
青い海に、熱帯の植物。ギザギザの葉が天に向かって伸びている。アイラはむっとしてス
メラギに躙り寄った。
「どこに着いたのよ、海路間違って! あたしはラヴィアン王国にと言ったの!」
「間違ってるわけじゃねぇよ!」
スメラギはムスと言い返した。
「立派にラヴィアンの領域だ。ラヴィアンの王族の奴らは、この孤島で奴隷の品定めすん
だよ。検分、聞いている限りは、まともそうだが」
「奴隷を探しにくる時点で、既にまともじゃない」
「ひひひ。まあ、そのうち迎え来てやっから。精々励め、励め〜ェ」
ひく、と眉を下げたアイラの前でスメラギは商品の点検に余念がない。小さな子供の顔
を綺麗な布で顔を拭いてやったり、高価そうな腕輪をつけたり、髪を上げたり……。思い
やりではない。少しでも見目を良くして、売り値を上げようとの魂胆だ。
(なによ、守銭奴海賊! 奴隷売買なんて信じられない)
「おーい、並べ〜」と燦々と太陽が降り注ぐ爽やかな海風の中、アイラたちは一列に�並
べ�られた。
対岸がすでに見える。�受け渡し�用の大きなテント、地面の真ん中に大きな×印があ
り、向こうには高級そうな寝椅子に座った王子二人の姿が見えた。一人はすぐに立ち、検
分を始めた様子。もう一人は何度もあくびを噛み締めて、太陽を睨んでいる。
などをおっぱじめられてはたまらない。お兄は過保護過ぎるんだよ)
出来すぎる兄、ヴィーリビア無敵艦隊司令長官シェザードの存在は常にアイラの頭痛の
種だ。どうしたものかと悩む前で、甲板から声が上がり始めた。聞きつけたサシャーが声
をかけてきた。
「着いたみたいですね、姫さま、姫さまァ〜?」
アイラは俯いたまま固まっている一群を眺めた。
「ねえ、どうしてみんな、下を向いて顔を上げないのかな、ほら」
「奴隷として売られる方たちです。そっとしておきましょ、ね?」
それもそうか。アイラはサシャーに頷いて座り込んだ。靜かに船が止まった。
どやどやと海賊たちが踏み込んできた。「奴隷たちを出せ」。何とも物々しい雰囲気。
「ぼけっとすんな。おまえも」とスメラギに腕を引かれ、アイラは�愁傷な振り�でのそ
のそ歩いた。
砂漠を想像していたアイラの視界に飛び込んだ風景は熱帯雨林だった。広がっているは、
青い海に、熱帯の植物。ギザギザの葉が天に向かって伸びている。アイラはむっとしてス
メラギに躙り寄った。
「どこに着いたのよ、海路間違って! あたしはラヴィアン王国にと言ったの!」
「間違ってるわけじゃねぇよ!」
スメラギはムスと言い返した。
「立派にラヴィアンの領域だ。ラヴィアンの王族の奴らは、この孤島で奴隷の品定めすん
だよ。検分、聞いている限りは、まともそうだが」
「奴隷を探しにくる時点で、既にまともじゃない」
「ひひひ。まあ、そのうち迎え来てやっから。精々励め、励め〜ェ」
ひく、と眉を下げたアイラの前でスメラギは商品の点検に余念がない。小さな子供の顔
を綺麗な布で顔を拭いてやったり、高価そうな腕輪をつけたり、髪を上げたり……。思い
やりではない。少しでも見目を良くして、売り値を上げようとの魂胆だ。
(なによ、守銭奴海賊! 奴隷売買なんて信じられない)
「おーい、並べ〜」と燦々と太陽が降り注ぐ爽やかな海風の中、アイラたちは一列に�並
べ�られた。
対岸がすでに見える。�受け渡し�用の大きなテント、地面の真ん中に大きな×印があ
り、向こうには高級そうな寝椅子に座った王子二人の姿が見えた。一人はすぐに立ち、検
分を始めた様子。もう一人は何度もあくびを噛み締めて、太陽を睨んでいる。