ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
Prologue
 ハルフェリア対戦という大きな戦いが終わり、1年と9か月が経った。戦で荒廃した土地も少しずつ緑を増やし、城下を中心に人が集まり活気を取り戻しつつある国、ハルアトス。
 ハルアトス国王、ジェイク。王妃、マリアンヌ。そしてその二人の間に生まれた、双子。それが…。

「ミア、ジア見なかったか?」
「クロハ!それがどこにも見当たらなくて…。」

 銀のウェーブがかった長い髪を揺らしながらそう言ったのはミア・ウォリティアヌ・ハルアトス。王位継承権第二位の、双子の妹である。銀の瞳はますます輝きを増し、可愛らしくありながらも美しく成長している。
 そして、ミアに声を掛けてきた赤茶色の髪の青年はクロハ・ローシュ。城の専属医師兼薬師として日々、治療や呪いの研究、新薬の開発に勤しんでいる。

「…ってことはあれか。夕方から春の宴が開かれようとしてるっつーのに、あいつは…。」
「十中八九そうでしょうね…。お姉様らしいといえばそうなんですけど。」
「らしいけど、自分が王位継承権第一位っつーこと、もうちょっとわかったほうがいいだろ、あいつも。」
「そう、ですね。魔法の勉強は頑張っているんですけど…。」
「城下が好きすぎるな、あいつ。城下っていうか、あいつの場合、そこに住む人がってことだろうけど。」
「そうね。」

 このハルアトスという国だけではないが、この世界には魔法というものが存在する。魔力をもつものとそうではないものが、土地をわけて生きている。今のところは交わらずに。例外はこのミアと、その姉だけである。
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