ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
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「私はお前に眠れ、と言ったと思っていたが?」
「…すみません。眠れなくて。」
「まぁ、僕も同じく眠れないよ。」
「情報収集、といったところか。この図書室には鍵がかかっていないのか?」
「はい。地下の書庫には鍵がかかっていて、欲しい情報はそちらにある可能性の方が高いですが…。今自分が入れる範囲で探せるのはここしかなくて。」

 基本的にキースの睡眠時間は一日4時間程度だった。火傷のせいとはいえ、3時間近く眠っていたキースに眠れるはずもなかった。胸のざわつきもそれを助長する。

「それで、どうやって調べているんだ?ここに寄せてある書物は?」
「過去1000年以内の地図の変遷をたどるものと、龍についての記載のあるものを集めました。方法としては…。」

 キースは掌に龍と書いた。そしてその手を本棚にかざす。すると、棚から数冊の本がこちらに向かってゆっくりと飛んでくる。

「…なるほど、便利な魔法だ。」
「すごいね、キース。どんどん新しい魔法を習得している。こんなのを使っている魔法使いを見たことがないよ。」
「光の魔法の応用です。母が父のために研究していたみたいで。」
「それを再現してみせた、というわけか。」
「俺の魔法は独学な部分が多いですからね。」
「それで、地図上では使い魔の位置はどこになる?」

 キースは最も最新の地図を広げた。

「ハルアトス城から東…距離感としてはこの程度だと思うのですが。」
「…森、だね。」
「山、とも言える。」
「そうなんです。過去のものを見ていても、その部分は変わっていないんです。」
「ここに人が住んでいるが、地図には詳しい記載がない、と。」
「はい。」

 場所はウィンの停止位置から考えてここで間違いはないだろう。そして、キースにはもう一つ気になっている点があった。
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