ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「…なるほどなぁ、それじゃあ地図に描かれないのも納得がいくね。」
「ああ。この地図は人専用のものだ。人ではない彼ら、そして彼らのいる土地は認識されていたかいないかに関わらず、記載はされない。」
「まぁでも、僕も知らない、キースも知らない。おそらく国王、王妃においてもあの様子じゃ知らない。…ということは、認識されていないとみなした方がいいね。」
「だろうな。見た目だけなら人とほぼ変わらない私たちですら、この有り様だ。人から隠れて生きている。そんな中で獣と人間の血が混ざる、しかも姿まで獣になれるときたら、人間は恐ろしさを感じるだろう。」

 自分の境遇と重なって思えた。血の混ざり。認識されない『自分たち』

「…キース、大丈夫か?」
「あ、はい。」
「では、続ける。…と言いたいところだが、これ以上有益な情報はないのだ。」
「え?続きは書いていないんですか?」
「龍がいる、という記載はない。兎、狐、馬、鳥などの姿と人の姿の両方をとることができることしか書いていない。龍の文字はないんだよ。そして最も肝心なことだが、その姿をそれぞれとったときに、どのような能力を発揮するのかについては一切書かれていない。」
「龍は、炎を吐くことと飛行が可能でした。」
「広間の様子から察するにそのようだな。」
「ということは、それ以外の能力は直接行って確かめるしかないってこと?」
「…そういうことになる。私たち同様に魔法を使うことができるとしたら厄介だな。動きが獣で、魔法まで使われたら戦いにくくてかなわん。」
「そう…ですね。」
< 22 / 100 >

この作品をシェア

pagetop