ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー

共生するということ

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「とーちゃく！」

　そう言ってフォーンはランの背から飛び降りた。シラに手を引かれながらジアも降り立つ。目の前に広がるのは豊かな自然だ。木々は生い茂り、木製の家が木々の間に建っている。自然を生かしつつ生活している様子がありありと伝わってきて、ジアは思わず笑顔になる。

「…すごいわね。森の木を活用しながらも、切りすぎていない感じがするわ。」
「だーからさぁ、お姫様、自分の状況わかってる？君は誘拐されてきたんですけどー？」
「肝の据わりすぎた女やな、まったく。」

　龍の鱗が剥がれてキラキラと夜空を舞う。そして風に包まれて、ゆっくりとランはジアの目の前に下りてきた。

「アスピリオへよーこそ、姫さん。オレはラン・ドラスト。アスピリオの長や。」

　黄緑色の瞳が真っ直ぐジアの目を捉える。

「あなた、目の色は龍になっても変わらないのね。」
「…そこやないやろ…ったく調子狂うわ。もっと抵抗はせんのかい。」

　ジアはランを見据えて、口を開いた。

「あなたの背から落ちることの方が死を意味するわ。あたしはここで死ぬわけにはいかない。ハルアトスに帰ってやらなくちゃいけないことがある。」
「だからー、姫さんは帰れん。」
「それはやってみなくちゃわからないでしょう？でも、すぐにはやらないわ。それに…。」

　ジアには気になっていることがあった。

「どうしてあなたが龍になれるのか、気になっているの。ここも初めての場所よ。ハルアトス領ではないのだろうけれど、こうして人が生活していることをあたし、今初めて知ったわ。だから、ここのことをちゃんと知りたい。その後よ、あたしがあたしのしたいように行動するのは。」