ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「ジア、ちゃん?」
「ジアおねえさん?」
「どっちの呼び方でもいいよ。言いやすいものにしてね。」
「うんっ!」

 こういうとき、子供というものは素直だ。そしてその順応性の高さに驚く。ジアと子供たちのそんなやり取りを見ていた大人たちの目線も柔らかいものに変わる。

「アスピリオをよく知ってください、ジア殿。」
「はい!そのつもりです。」

 自分が招待されてきたわけではないことも、ハルアトスへ帰らなくてはならないこともわかっている。それでも、ここにきたことを無駄にはしたくない。先ほどの民衆の言葉も気になっている。『ようやく認めるようになった』とはどういうことなのか。そこが解ければ、今までジアがこの場所を知らなかった理由もわかるのではないか、そんなことも考えていた。

(ハルアトス…と同等レベルの人口だと思うのよね。とすれば、それこそ認知されていない、あたしが知らないというのはおかしいと思う…のだけど。)

 王を継ぐものとして、自国のことはもちろん、それ以外の土地のことを知るべきだとは思ってきたし、学んでもきたはずだ。しかし、ジアが見たどんな地図にもここのことは載っていなかった。それはあまりにも不自然に思える。

(龍とランの関係を解き明かすことが一番かな。…ランは話してくれるのかな?)

 ランについては全くよくわからない。一番最初から、わけがわからなかった。好かれているとも思えないし、かといって殺したいと思われているとも思えなかった。

(…シラなら話してくれるのかな?)

 食事を終えてシラを見ると、すぐに目が合った。にっこりと微笑まれればジアもそう返すしかない。
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