ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
それからしばらく、城下の様子を見て回った。特に買い物をするわけでも、国民と会話をするわけでもなく、ただ眺める。ふと木を見やると桜が咲き始めている。
「今年も一緒に桜が見られたね。」
「うん。」
来年は一緒に桜が見たい。そんな話をしたのは、王家がもとに戻ったことを国民に知らせる復活の祭典の後のことだった。そんな願いを一度ならず二度までも一緒に叶えることができることが、当たり前なんかじゃないことを2人はよく知っている。こうして隣を歩くことが、まだ多くに認められない社会である、ということも。
想いは双方にあり、通じ合っている。その感覚はある。大切であり、大切にされている。ただ、2人を阻むものはまだまだたくさんある。その現実はなくならない。だからこそキースは魔力をもちながらもそれを隠して城下にいるのである。
「…思っていたよりも、人の気持ちや考えを変えていくのって難しい。」
「え?」
「差別や偏見って、歴史上何度も繰り返されているし…なくならないなぁって。」
「…そうだね。でも…。」
キースはジアの手をそっと握った。
「差別や偏見の対象ではない人が立ち上がって声をあげて、何とかしようとしてくれている姿に勇気をもらえるよ。俺もその一人だ。」
キースはそっと、ジアに笑みをこぼす。それに応じるようにジアも笑顔を返す。
「じゃあそろそろ行こうか。ちょっと人目につかないところじゃないと使えないし。」
「そうだね!行こう!」
手は振りほどかずに、森の奥の方へと駆け出す。ジアは少しだけ強く握り返した。
「今年も一緒に桜が見られたね。」
「うん。」
来年は一緒に桜が見たい。そんな話をしたのは、王家がもとに戻ったことを国民に知らせる復活の祭典の後のことだった。そんな願いを一度ならず二度までも一緒に叶えることができることが、当たり前なんかじゃないことを2人はよく知っている。こうして隣を歩くことが、まだ多くに認められない社会である、ということも。
想いは双方にあり、通じ合っている。その感覚はある。大切であり、大切にされている。ただ、2人を阻むものはまだまだたくさんある。その現実はなくならない。だからこそキースは魔力をもちながらもそれを隠して城下にいるのである。
「…思っていたよりも、人の気持ちや考えを変えていくのって難しい。」
「え?」
「差別や偏見って、歴史上何度も繰り返されているし…なくならないなぁって。」
「…そうだね。でも…。」
キースはジアの手をそっと握った。
「差別や偏見の対象ではない人が立ち上がって声をあげて、何とかしようとしてくれている姿に勇気をもらえるよ。俺もその一人だ。」
キースはそっと、ジアに笑みをこぼす。それに応じるようにジアも笑顔を返す。
「じゃあそろそろ行こうか。ちょっと人目につかないところじゃないと使えないし。」
「そうだね!行こう!」
手は振りほどかずに、森の奥の方へと駆け出す。ジアは少しだけ強く握り返した。