ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「ウィン、おかえり。」
「ぴぴぃ!」
「へぇ…こいつが使い魔ってやつか。」
「可愛いですね、とっても。はじめまして。」
「ぴぃ!」
「…よろしくって、一応言ってるよ。」
「言葉が話せるのですか?」
「使い魔と主人だけはな。通じている。それ以外の者には鳴き声にしか聞こえんよ。」
「へぇー…まじで魔法みてぇだな。」
「…クロハ、面白いこと言うね。魔法だってこれも。」

 ウィンを掌に乗せ、ウィンの姿を音と風に戻す。ウィンが見てきたものを、掌から吸収し、キースはゆっくりと目を閉じた。
 キースの瞼に映る景色には、ジアが映っていた。ウィンはジアの跡を正確に追うことができ、なおかつその姿をしっかりととらえることもできていたようだ。
 森の中に一つの集落がある。そこを中心に家が広がって分散している。ウィンがくれた映像の中のジアは笑っていた。そのことに安堵する。

(…どんな交渉をしたのか知らないけど、誘拐された状況で笑っていられるのも大したもんだなぁ。)

 安心から、そんな本音も零れ落ちる。拘束されているというわけではなさそうだ。付き人のような人と共に、比較的自由な行動がとれているらしかった。

「どうだ。ジアはいたか。」
「ジアを見つけることができていたようです。ただ、ジアはかなり動き回っていたようですね。」
「動き回っていた?監禁されていたんじゃなくて?」
「全然。そんな素振りないよ。ジアは笑っている。」
「…さすがだな、王の器よ。」
「ジアちゃんらしいなぁ。」
「大方勉強でもしに来た、くらいの心持なのだろう。」
「…そうかもしれません。」
「ま、とはいえ心配なのに変わりはないし…早めにジアちゃんを見つけて帰ろう。」
「問題は、ジアの定住先がわからないことです。きっと、ここから数キロ行った先の人が最も多く集まっている場所が…一番会える確率が高いですけど…。もちろんそこには龍がいる可能性も高いわけで。」
「では、ためていた魔力をここで存分に使おうではないか。」

 シュリはふんと鼻を鳴らしてそう言った。
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