ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
― ― ― ― ― 

「っ…!」
「ちょっ、キース、静かに!気持ちはわかるけど!」

 シャリアスがキースの口元を覆った。思わず出ていきそうになったが、それが賢明ではないことはわかっている。

「しかし、見事な変化だ。仕組みはあの一回じゃわからない。」
「…シュリはいつでも冷静でいいね。」

 キース、シュリ、シャリアスの3人はウィンが通った経路を辿りながらアスピリオの中央を目指していた。そんな矢先の出来事だった。緑の龍が空を舞ったのが目に入ったのは。
 ちなみにクロハとミアは人気のない森の中にテントを張り、留守番をしている。

「それに、ジアも思ったより頑張っているではないか。」
「…そう、ですね。」
「不満げだな。」
「シュリ!煽っちゃダメ。」
「あの程度の接触でいちいち文句を言っていたら、この先がもたないぞ。」

 シュリの言うことはもっともだった。ジアは王族としてこれから、男女も年齢も関係なく多くの人と交流をし、仲を深めていく。頭ではわかっているのに、身体が時折、それを無視して動きそうになる。

「…キース。」
「今のジアを真っ直ぐに見つめろ。この先、未来に、ジアの隣にいようという思いが小さくないのなら。」

 シャリアスがキースの身体を押さえる力を弱めた。
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