ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
― ― ― ― ―
ジアは、まだ震えたままのランの背中に手をあてた。
「ラン。あなたたちが今まで背負ってきた歴史はきっと、ずっとあなたたちを苦しめたものなのでしょうね。だから、その長い時間の努力も見ずに今のここが好きだなんて言うあたしの言葉が軽薄に聞こえたのかもしれないけれど、その努力を今から始める国もあるのよ。…それはあたしの国なんだけど。」
ランの返事はない。
「人だ、とか…動物だとか、できるとかできないとか、そういうあっさりと誰かを拒絶してしまえる尺度ではなく、心をもち、生きているという意味で同じだという価値観で進むこの場所は、あたしの理想郷よ。あたしも目指したいの。…目指しているの。あたしが、胸をはって国民の前で魔法が怖くないって…言うこと。そうすればきっと…。」
(キースが受け入れてもらえる社会が、できる。たくさん、笑顔になってもらえる。)
もう二度と、悲しい顔をさせたくない。もう十分すぎるほど泣いて、傷ついてきた人だから。
「気ぃ、変わったわ。」
「え…?」
ランは顔を上げた。そして右手がジアの左頬に触れる。
「ハルアトスという一つの国家に、アスピリオを認知させたろーおもて姫さん連れてきたけどなぁ…帰しとーなくなったわ。」
「…ま、待って?それって最初から帰すつもりだったってこと?」
「あんたは取引材料だったっちゅーこと。場合によっては婚姻関係結んで友好条約でもって思っとったけど。…それはさっきまでの話や。」
ランの顔が近付いてくる。
「な…な…なに…?」
そっと額が重なった。
「元々、心はいらんっておもーとったけど、…気が変わったわ。オレ、お前の心ごと欲しーなった。」
「っ…な、何言って…!」
「ラビ、フォーン、捕獲や。」
「え!?」
ジアは、まだ震えたままのランの背中に手をあてた。
「ラン。あなたたちが今まで背負ってきた歴史はきっと、ずっとあなたたちを苦しめたものなのでしょうね。だから、その長い時間の努力も見ずに今のここが好きだなんて言うあたしの言葉が軽薄に聞こえたのかもしれないけれど、その努力を今から始める国もあるのよ。…それはあたしの国なんだけど。」
ランの返事はない。
「人だ、とか…動物だとか、できるとかできないとか、そういうあっさりと誰かを拒絶してしまえる尺度ではなく、心をもち、生きているという意味で同じだという価値観で進むこの場所は、あたしの理想郷よ。あたしも目指したいの。…目指しているの。あたしが、胸をはって国民の前で魔法が怖くないって…言うこと。そうすればきっと…。」
(キースが受け入れてもらえる社会が、できる。たくさん、笑顔になってもらえる。)
もう二度と、悲しい顔をさせたくない。もう十分すぎるほど泣いて、傷ついてきた人だから。
「気ぃ、変わったわ。」
「え…?」
ランは顔を上げた。そして右手がジアの左頬に触れる。
「ハルアトスという一つの国家に、アスピリオを認知させたろーおもて姫さん連れてきたけどなぁ…帰しとーなくなったわ。」
「…ま、待って?それって最初から帰すつもりだったってこと?」
「あんたは取引材料だったっちゅーこと。場合によっては婚姻関係結んで友好条約でもって思っとったけど。…それはさっきまでの話や。」
ランの顔が近付いてくる。
「な…な…なに…?」
そっと額が重なった。
「元々、心はいらんっておもーとったけど、…気が変わったわ。オレ、お前の心ごと欲しーなった。」
「っ…な、何言って…!」
「ラビ、フォーン、捕獲や。」
「え!?」