ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
― ― ― ― ― 

「ジア様っ…どうして…ラン!あなた一体…!」
「うるさかったから眠ってもらっただけや。明日の朝までぐっすりやで。」
「…どうしてこんなこと…。」
「ラビに聞いたやろーけど、オレは明日この姫さんと婚約の儀を挙げる。明日の朝から準備、頼むで。」
「婚約!?ラン、あなた正気…?」
「当たり前やろ。シラ、姫さん任せるで。ガイはこっちの3人。森の奥の空き部屋で監視。」
「…わかった。」
「ウルア。」
「なんだ?」
「お前も監視だ。こいつら、多分ただ者じゃない気ぃするねん。」
「…ああ。」

 ウルアとガイ、そしてシラは顔を見合わせた。
 ランは意気揚々と、大浴場に向かっていく。そして婚約のいきさつに興味をもった民衆たちも次々とランに続いた。
 広場に残ったのは、3人だけだった。

「…麻痺薬を打たれたのは男2人だな。」
「1人は、ランの炎を浴びた男だ。」
「…ジア様の、想い人。」
「なに!?」
「…なるほど。ランにもそれがわかったんだな。」
「でしょうね。」
「それで、婚約。」
「当てつけでしかない。ランの好きそうなことだ。」
「ガイ、シラ。」
「…ウルア、言いたいことはわかっているわ。」
「ランの暴走を止めず、ここまで来たのは俺たちの責任でもある。」
「フォーン、ラビ、ホルブはだめだ。まるで考えのない3人だ。」
「…ガイの言う通りね。3人で内密に、ジア様をキース様へお返ししましょう。」
「俺たちは3人の様子と、3人の能力を確認する。シラはジア様の様子をチェックし、ばれないように俺たちに伝えてくれ。」
「ええ。」
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