ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「最初の質問に答えてほしい。何の血が混ざっている?」
「俺は狼、ガイは虎だ。」
「…なるほど。だから狼であるそなたが周りを見に行くのだな。」
「そういうことだ。」
「…シュリ殿。」
「なんだ?」
「驚かないのですね、あなたたちは。我々の存在に。」
「龍を見せてもらってるし、魔法を主に生きている者としては大体のものに驚かないよ。」
「そういうものなのか、魔法って。」
「はい。…聞きたいことは山ほどあるのですが、ジアの身は…。」

 キースは話を遮った。一番気になるのはそこだった。

「姫君に手荒な真似をすることは絶対にない、と言い切れる。」
「…そうだな。ランは、…色んな意味で特別視している。」

 色んな意味で、という言葉がキースの耳に引っかかる。そして解き明かさなければならないのは、身体が変わることによる能力だ。

「…俺からも、訊いていいですか。」
「もちろんだ。」
「龍の能力は飛ぶことと、炎を出すこと、それ以外にありますか?」
「いや、それ以外にはない。あとは一時的に身体が丈夫になることだな。それは俺たちすべてに共通だ。」
「そなたたちも身体が丈夫なのか?」
「一時的に、です。皆さんのようなすぐ治す力は有していません。あと、怪我を受けた状態で人間の身体に戻るのが最も危険です。」
「…なるほど。獣の身体は強いが、怪我は致命的、と。」
「はい。だからこそ、戦いは好まない。」
「…自分の意志で身体を変えることができるんですよね?」
「ああ。だが、さっきも言ったように、突然大きなダメージを受けた場合は身体がもとに戻ることの方が多い。」
「…攻撃せずに、ジアだけ返してもらえれば…。」

 誰かを傷付けたいわけじゃない。自分が傷つくのは良くても、他人はだめだ。そして、最もだめなのは…。
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