ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
 コンコンと窓をつつく水色の羽の鳥がいる。ガイが窓を開けると、その鳥はすっと部屋の中に入り、風に包まれたかと思うと人の形になった。

「シラ、丁度良かった。」
「ほお、今度は鳥か。美しいな。」
「…ありがとうございます。この度はランが…申し訳ありません。」
「謝罪はいい。それで、そなたはジアと一緒にいたな?」
「はい。この3日間、ジア様のお世話をさせていただきました。」
「ジアは…!」
「お目覚めになりました。本来であれば朝まで効くような薬ですのに…。」
「その辺は姫君も、魔力とやらをもつわけだな。」

 シラは静かに頷いた。

「ジア様には全てをお話ししました。そして薬も本来は朝まで効くものであるため、今動くのはよくない、ということも。ランにはジア様の魔力については話しておりませんので。今は横になっていただいております。」

 シラがキースの前に立つ。

「キース様、ジア様はキース様のことを心配しておられました。火傷の具合は…。」
「もう完治しています。ありがとうございます。」
「…よかった…。ジア様も喜ばれます。」
「…では、ジアの身についても心配はないということがわかり、役者は揃った。あとはジアをどう奪還するのか、ということだ。」

 シュリがにやりと笑う。それを見たシャリアスが、続けて口を開いた。

「あとは、ランって人だね。彼にジアちゃんを諦めてもらうにはってところも考えないと。」
「それはキースの役目だろう。」
「え?」
「何を間抜けな顔をしているのだ。ジアが姫ならば奪還する王子はお前だろう。」
「い、いやっ…そもそも王子じゃないですし…。」
「魔法使いが奪い返す、そんな物語も悪くないぞ、キース。」
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