ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「んじゃ、朝の話の続きや。」
「…ラン、あたしは…。」
「他に好きな人がおるんやろ?知ってる知ってる。しかも両想い、それも知ってるで。」

 じゃあなんで?その言葉はゆっくりと飲み込んだ。

「でもなー姫さん、姫さんは姫さんやんか。国益のために結婚するやろ?まぁー全然国益にならへんオレとは、ふつーに考えたら結婚せぇへんけど。」
「…そうよ。」
「でも、姫さんがここみたいな場所をハルアトスに作りたいゆーんやったらな、こことハルアトスをくっつけていく方が手っ取り早ない?」
「くっつける手段は結婚だけじゃないわ。」

 条約でも、交渉でも、手段は他にもある。

「それはそうやねんけど、オレとやったら同じ目線で同じもの目指せるで。」
「…どういう意味?」

 言葉が指すところの正確な意味が読み取れない。

「姫さんが言った理想郷を導いてきた教えは、龍族にある。姫さんの目指す想いは龍族の根幹や。」

 ランは空を見つめている。

「龍は本来守護者なんや。守る者。そう教えられてきたし、実際そうやと思う。みんなを守りたい、この生活を守りたい、それと同時にな、別のモンも守りたくなった。」
「別の…もの…?」
「みんなの願いや、願い。」
「願い。」
「せや。外の世界が見たい。自分の力を試したい。そんな気持ちは、痛いほどようわかった。オレもそうやったからな。まぁーオレにはここを守るっていう役目があるんで無理なんやけど。でもどうにかして、アスピリオのみんなの中でそんな願いをもつヤツだけでも出してやりたいやんか。そう思って、でも何も考えず、龍の姿で飛んでいた。気付けば、ハルアトスやった。」
「え…?」
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