ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「人型をとればバレへんやろおもて、少し遠くの森に降り立ち、人型に変えた。結構歩いたで?そして、お前の話を聞いた。あの時の衝撃ったらなかったで。まさかこんな人間に出会うとは思わへんかった。姫さん、ゆーたこと覚えてる?」
「…もちろんよ。」
「『すべてが在っていい世界、全てが在ることが当たり前の世界を作ること。』そう言うてた。」

 それは変わらず、ジアの心の奥底にある。

「この人が、王族で、次期ここの王になるのかって思たらな、ゾクゾクしたで。アスピリオも変わるかもしれへん。身体の違いを一緒に乗り越えようとしてくれるかもしれへん、アスピリオを国として認めようとしてくれるかもしれへん。…どんだけ希望が湧いたか。」
「…あの場所に、いたのね、ランは。」
「ああ。今もやけど、アスピリオの中でハルアトスまで飛んでこれるやつはオレしかおらん。あの話をもしシラたちが聞いても、同じようにゾクゾクしたと思うで?」
「…だったら、嬉しいな。」

 それはジアの素直な想いだった。一緒に頑張ろうとしてくれる人がいることは、素直に嬉しい。

「アスピリオに戻ったときの興奮が忘れられん。だからあの日からこれまで、アスピリオをもっとよくしておかんとって必死やった。もしあの時の王女が来たら、自信をもってここを見てもらえるようにな。」
「…そう、だったんだ…。」

 突然明かされる事実。そして、確かに同じ方向は向いているのだということも、よくわかる話だった。

「なぁ、姫さん。」

 突然詰められた距離に、ジアは後ずさった。
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