ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「昔話は終わりや。今度は未来の話をせぇへんか?」
「未来の…話?」
ジアの背中が壁に当たる。逃げ場が、ない。少し見上げた先にランの黄緑色の瞳がある。
「姫さんの目、綺麗やなぁ。」
「…ラン、何が言いたいの?」
「どうしても、オレのもんにならへんの?」
「ならない。」
「…変わらんもんなぁ、オレのこと見ても、その目は。」
「え?」
「あいつのこと見るときだけやんか、目の奥が変わるの。」
ランの表情の意味が読めない。ゆっくりと近付くランの顔に、思わずジアは顔を背ける。
「なぁ、人の話は目ぇ見て聞かんと。」
頬に添えられた手。これは、ジアの知る手よりもずっとごつごつしている。違う、と心が叫ぶ。
無理矢理目は合わせられた。
「一緒に、誰もが等しく、幸せになれる国を作ろうって思われへんか?」
少しかすれたランの声を聞くのは初めてだった。夕焼けがランの左頬を赤く照らす。
アスピリオとの友好関係を築きたいという気持ちはある。ただの個人として、だけれど。そして、ここの生き方を取り入れていきたいとも思うし、ランの気持ちも全てがすべてわかるわけではないけれど、わからなくはない。誰よりも自由が欲しくて、自由じゃないランが目指す、最大の自由を切り開く手伝いをしたいとは思えるけれども、ランの隣に立ちたいとはどうしても思えない。隣にいてほしい人はいる。
「…できない。思えない。どうしても。」
じわりと浮かぶ涙。それでもジアは真っすぐにランを見つめた。
「隣に立ちたい人がいるの。」
「ジア!」
聞こえただけで涙が込み上げてしまう声が、名前を呼んでいる。その声と同時にガラスが割れ、目の前に立つのは…。
「キース!」
「ジア!」
目が合った、と思った瞬間だった。ジアの頬に触れた手が、視界を変える。唇が、知らないものと重なった。
「未来の…話?」
ジアの背中が壁に当たる。逃げ場が、ない。少し見上げた先にランの黄緑色の瞳がある。
「姫さんの目、綺麗やなぁ。」
「…ラン、何が言いたいの?」
「どうしても、オレのもんにならへんの?」
「ならない。」
「…変わらんもんなぁ、オレのこと見ても、その目は。」
「え?」
「あいつのこと見るときだけやんか、目の奥が変わるの。」
ランの表情の意味が読めない。ゆっくりと近付くランの顔に、思わずジアは顔を背ける。
「なぁ、人の話は目ぇ見て聞かんと。」
頬に添えられた手。これは、ジアの知る手よりもずっとごつごつしている。違う、と心が叫ぶ。
無理矢理目は合わせられた。
「一緒に、誰もが等しく、幸せになれる国を作ろうって思われへんか?」
少しかすれたランの声を聞くのは初めてだった。夕焼けがランの左頬を赤く照らす。
アスピリオとの友好関係を築きたいという気持ちはある。ただの個人として、だけれど。そして、ここの生き方を取り入れていきたいとも思うし、ランの気持ちも全てがすべてわかるわけではないけれど、わからなくはない。誰よりも自由が欲しくて、自由じゃないランが目指す、最大の自由を切り開く手伝いをしたいとは思えるけれども、ランの隣に立ちたいとはどうしても思えない。隣にいてほしい人はいる。
「…できない。思えない。どうしても。」
じわりと浮かぶ涙。それでもジアは真っすぐにランを見つめた。
「隣に立ちたい人がいるの。」
「ジア!」
聞こえただけで涙が込み上げてしまう声が、名前を呼んでいる。その声と同時にガラスが割れ、目の前に立つのは…。
「キース!」
「ジア!」
目が合った、と思った瞬間だった。ジアの頬に触れた手が、視界を変える。唇が、知らないものと重なった。