ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
― ― ― ― ―

「ジア!」
「クロハ、ミア!昨日はありがとう!疲れは取れた?」
「はい。お姉様は?」
「元気だよ!あたしは何もしてないし。」
「そんなこともあるまいよ。」
「シュリ!」

 お昼には目が覚めたランの復帰祝いと、ジアたちの送別を兼ねて夕方から宴が開かれるということで、広場に集まっていた。

「最も大事なときに、『時を止めて』みせた。魔力の消耗は感じたか?」
「んー…ちょっとだるくはなったけど、もう元通りだよ。」
「すっきりした顔をしている。…良かったな。」
「うん。」

 きっとシュリにはお見通しなのだろう。それでも余計なことを言わず、ただ見ていてくれる。そのことに、何度力をもらったかわからない。

「キース、お前はどうなんだよ?」
「え?あ、クロハの薬、よく効いたよ。お風呂で確認したけど、全然傷、残ってない。」
「ならいーけど。それに、顔も吹っ切れたみたいだな。」
「うん。…自分だけのことじゃないことを、自分一人で考えるのはやめるよ。」
「よーやくお前も人間らしくなってきたな。」
「え?」

 クロハはキースの背中を思い切り叩いた。

「いたっ!」
「そういうのを、ジアは待ってたんだぞ。」
「え?」
「まーそういうの待ってたの、ジアだけじゃねーけど。」
「…うん。ありがとう。」

 今、こうして人と関わって、笑っている自分を、2年前の自分が想像できただろうか。答えはきっといいえ、だろう。ずっと独りで生きていくのだと、だからこそ命は要らない、と思うようになった自分は今、もういない。
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