ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「ここ、アスピリオは正式な国家やない。外に出たくても出られへんくて、オレに相談してきたやつは一人やない。もっと外が見たい、力を試したい、外で学んでここに持ち帰りたい、いろんな気持ちがあった。いろんなことを考えてた。ここを正式な国家であると他の国に認めさせ、オレたちの身体のことや力のことを正しく理解してもらえる未来を考えた。そして、この姫さんにたどり着いた。」
「…?」

 キースが首を傾げる。この話はジアとランの間でだけ、話されたことだ。

「ジアの語る未来に、オレたちの未来を重ねたくなった。でもそれはちゃうよなぁ、って。オレたちはオレたちで努力せなあかんし。で、ジアはジアで、アスピリオみたいな場所を目指すってゆーてるし。まぁ、結論はな、みんなそれぞれ、行きたい方向に向かって頑張ろなって話なんやけど。ジア、追加したいことあるか?」
「え?」

 突然話を振られ、キースの方を見上げると、キースは笑って

「行っておいでよ。」

 と言った。その言葉に押されて一歩踏み出す。

「短い間でしたが、たくさん親切にしてくださってありがとうございました。皆さんがこの場所を大切にしていること、みんながみんな、できることを精一杯やって生きていること、そして…。」

 ジアは一呼吸おいて、ランを見つめた。

「ランが、みんなを大切に想っていること、そんなランのことを、みんなも大切に想っていること、どれもよく伝わりました。次、あたしを呼ぶ時は自分でくるからちゃんと招待してほしいかな、ラン?」
「せやなー招待状運んだるわ。」
「…ここは、あたしの理想がたくさん詰まった場所です。だから、あたし個人としては、ここが在りたいように在れるよう、できることをしたいです。でも、まだあたしにその力はありません。でも、頑張るので、みなさんも次に会う時まで、どうか元気でいてください。あたしが好きになったアスピリオがあるように、してもらえたらなって思います。」
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