無の王
ホテルの喫茶店に着くと零は飛鳥を窓際の席に座らせる。


「なんでも好きなものを頼んで良いぜ。」


余裕の表情の零だが飛鳥は違っていた。


「あのー、私達こんな格好でここにいても良いのかな?」

飛鳥は周りをキョロキョロする。


確かに周りはスーツ姿やドレスを着ているがいる。


飛鳥は地味なスカートを履いており、俺もラフな格好だからこの場では少し浮いている。


だが、ここの喫茶店は俺達みたいな客も沢山利用する。

「安心しなって。別に怒られたりしやしないから。それより、その服可愛いな。」


「えっ?本当?」

その時、零は顔を赤くする飛鳥を見ると少し「ドキッ」とした。


硬派な俺としたことが女の前で緊張したのだろうか?


何にせよ情けない事である。


零はとりあえず適当に会話しながら、飛鳥にバレないように鞄の中に手を入れて、ペン型録音機を用意する。



零がこれからやることは有名人の話の盗み聞きである。

ペン型録音機に周りの会話を録音して家に帰ったらどんな会話があったのか聞いてみる。


そしてスキャンダルのネタ…売れば金になるネタがあったらターゲットに接触して、より詳しく情報を聞き出すという金を得るための初歩的な行動に出た。


若い男が一人で喫茶店で食事は怪しまれるが、女連れならデートと周りの客は思うだろう。



これは飛鳥とデートしながら情報を得るという高度なテクニックだ。
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