無の王
「とりあえず勉強見てくれませんか?歓迎会までには終わると思うんで。」

綾瀬は零の腕を掴んで強引に連れていこうとする。

「ちょっと待てよ。どこに連れていく気だよ。」

「あたしんちですよ。家族は都合よく居ないのであたしの家でお勉強しましょー!」

「やめろ・・・硬派な俺が女の子の家にあがるなんて・・・。」

零は急に不安な顔をする。

異性の家にあがるなんて初めてだ。それも二人っきりで。


普段硬派な零だが、今は緊張して顔が引きずっている。

それに気付いたのか綾瀬はニヤニヤと笑う。

「あれれー?普段硬派でカッコ良いセンパイがもしかして緊張してますか?あたしの知っているセンパイはこんな時こそ堂々と振る舞う人ですよ。」


叩きやがる・・・軽口をっ・・・!

俺が異性の家に上がった事が無いのをあっさり見抜きやがって・・・!


小悪魔系女子・・・いや悪魔的女子だっ・・・!

綾瀬はやはり男の扱いが上手すぎる。

恐らくこの歳で10人ぐらいと付き合って来たんでは無いだろうか。


言う言葉一つ一つに無駄がない。

恐ろしい女だ・・・こいつ将来は男を騙して大金を得る詐欺師になるのではないのだろうか。

零はゾッとした。


そして、綾瀬の事はあまり異性として見ない様にしておこうと思った。
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