遠すぎる君
「良かったわ。しおりが恋してて楽しそうでホッとした。
しおりにはいつも家事とかさせてて、バイトも頑張ってくれていて、高校生らしくさせてあげたいのに。青嵐に彼がいるのに違う高校になってしまって。私達のせいで……ごめんね。」
箸を持ったまま項垂れているお母さんに慌てて否定した。
「私!家事も嫌いじゃないし、バイトだって楽しいし。
……それに、彼じゃないから……」
「そう言ってくれるから甘えてて、私……」
「ほんとに。ほんとに気にしないで。お母さんこそいくつもパートを掛け持ちしてくれて……いつもありがとう。」
「親が子供の食い扶持稼ぐのは当たり前なんだから……そんな事言わないで……」
そう言うと涙ぐんだ。
「お母さん……」
お母さんもこの二年、いっぱいいっぱいだったんだ。
お父さんがいなくなって親の責任が自分一人に乗っかってきて。
私はただ学校へ行ってバイトしてれば良かった。
お母さんが自分を責める事なんか何もない。
精一杯頑張っている。
私はきっと家計を助けて、早くお母さんを楽にしてあげたい、改めてそう思った。
そうして2年ぶりにお母さんが流す涙を静かに見守っていた。