遠すぎる君
美幸が用意してくれた試合スケジュールを確認すると、
土曜日の今日の昼が青蘭の第一試合のようだ。
美幸は「一人じゃ嫌でしょ?」と、サッカー観戦に付き合ってくれるようだ。
確かに一人私服で高校の部活の応援に行くのは気が引ける。目立つだろうし。
目立たない、でもできるだけかわいく見える服装を選んだ。
コットン地の白いノースリーブシャツに、ブルーのキュロットスカート。日避けの薄いカーディガンとスニーカーを履いて。
昔、遼に作ってあげた事があるレモンのハチミツ漬けを小さなタッパに入れて、鞄に入れた。
会えるかわかんないけど……
遼が試合をするサッカーコートの応援席には青蘭や相手校の応援がいっぱいだった。
さすがに全国をも意識している様子。
中学より期待がかかっているのがわかる。
「しおり~こっちこっち!」
聞きなれた声が聞こえてホッとする。
青蘭の応援団から少し離れた場所から私服姿の美幸が手を振っていた。
「今日はありがとう。制服じゃなくて良かったの?」
「いいのいいの。」
「久し振りだね、中田さん。」
「えっ?」
美幸の隣にこれまた私服の永沢君がいた。
「永沢くん……」
「ごめんね~俺も来ちゃった。中田さんに久々に会いたくて。」
その言葉が嬉しいので口許が上がる。
「ちょっと~。そこは青蘭を応援に……って言わなきゃダメよ~」
と美幸は少し小さな声で永沢君を諌めた。
「だって興味ないし」
つい笑いが漏れる。
「でもあのサッカーバカがどんなサッカーするのか見てみたいね。」
私達は大きな声で笑った。