遠すぎる君

「いくぞ!」

部長の合図でレギュラー全員が試合会場に向かうと、応援にきた青蘭の面々からの歓声を受けた。

県大会と比べ明らかに多い応援団だ。

「ん?」
あの応援団の塊からやや斜め上の席に座ってるのは……
永沢!?

アイツ……興味ないくせに。しかも青蘭の学生の癖に私服?
応援に……来てくれたんだろうか……?

え?そのとなりはまさかの松井!?こいつも私服かよ。

え?えぇーーっ!

そのとなりは、一番来てほしかった人が座っていた。

心臓はバクバク。

いや、「来てくれ」と言ったから「来てくれた」んだろうけど。
半ば諦めかけていただけに、狂喜を含んだ驚きが顔に出てしまった。

そっか、そっかぁ。
松井に聞いたんだ。

よかった。安堵のため息を漏らした。

しおりが来てくれた。
これで憂いは無い。
俺は精一杯やるだけだ。
俺は気合いを入れ直した。
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