遠すぎる君
遼の少し歪んだ顔を見て、やっぱり私を見られたくなかったんだろうなと確信した。
だって昔、「彼女ができた途端浮わついた」という理由で責め立てられたんだから。
罪悪感と胸の痛みを隠して歩いてくる遼から目を逸らした。
「……違っっ……来てくれてサンキュ。嬉しかった。」
遼は私の心を読み、そう言ってくれた。
杉本くんはニヤニヤしながら「俺帰るわ。じゃあな、中田さん。」と突然呼ばれて慌てた。
あ、杉本くんは私の事知ってたんだ。
ということは、元カノだって覚えてたって事だよね。
遼が責められる原因を作った元カノだって。
杉本くんを見送るように向けた遼の視線はそのまま固まった。
それは杉本くんではなく、その向こうのあのマネージャーともう一人の選手。明らかに揉めながら歩いてる。
先程から胸が締め付けられるように痛い。
遼は彼女に心配そうな視線を送り続けていた。
問題になった元カノの私。
雑貨屋で一緒に買い物するぐらい親しいマネージャー。
どうしても卑屈な考えが頭を離れない。
私は居たたまれず、「行って」と遼を促した。
前向きな気持ちで来たのに、もう前を向くなんて出来ないくらいに打ちひしがれていた。
中学3年の時に感じたこの苦しみから今すぐ解放されたかった。
そして私の鞄の中には、渡せなかったハチミツ漬けレモンが残った。